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2011/06/22

なぜという問のない生き方について

 「キリストは、神よりわれわれにつかわされた使者であって、わたしたちの浄福をわたしたちに告げ知らせた方であった。キリストがわたしたちに告げ知らせたこの浄福こそ、わたしたちのものであったのである」とエックハルトは言う。これは、私たちがこれまでに聞いていた福音とは、少しばかり異質なものに思われる。しかし、キリストの贖罪は、お呪いのようなものではない。その恵みは、私たちが御子と共に生きるためのものであり、その力は、聖霊の導きに従って歩む私たちの内にあるのである。
 つまり、私たちはともすると、福音に依存しようとするあまり、他力本願的になり、ただ与えられることばかりを追求する傾向があるようだ。しかし、例えば救いを受けるにも自分の心を開いて受け取るという自発的な行為が必要であるし、恵みにおいても、すでに与えられたという確信が先行すべきであることを主イエスご自身が勧めているのである。しかしエックハルトは、さらに積極的なことを語る。すなわち、「人間としてのキリストが所有しているすべての善は、この本性においてすでにわたしのものである」と。つまり、彼によると、外から新たに私たちにもたらされるものは何もない。たとえそれが救いであっても、恵みであっても、また賜物であっても、それらは外から私たちの内に入ってくるのではなく、すでに私たちの内にあるのである。それがあたかも私たちの内にはなかったかのように思うのは、私たちが神に創造された自分というものを良く知らないことと、自分の内に神の臨在を認めないことによるのである。
 神は、どのように私たちの内に臨在されるのか。エックハルトによれば、私たちの魂は、神の栄光を反映させる鏡である。まるで、そこに神がおられるかのように神の栄光は、私たちの内に現れる。それは正に神の栄光そのものなのであるが、私たちの魂は、魂のままなのである。同じように、恩寵も私たちの魂から反射し来たる。私たちの魂がそれを発したのではない。しかしそれは、確かに私たちの内から出たのである。このことを悟る必要がある。つまり、神が与え給うものは、みなそのようであり、神は私たちに対していつもそのようにして与えられるということである。例えば、子供を産むということ。これは、神の創造に等しいことで、私たち自身にそのような能力はない。しかし、産むのは人間であり、神ではない。神が私たちを通して創造の業を行われるのである。そこで、私たちが神の賜物を受け取ったり、神の業を行おうとする場合にも、この原則、つまり「神は、自ら行われるのではなく、私たちを通して御業を行われる」ということを良く認識する必要がある。私たちは、神に従いながらも、自らの意志でそれを行うのである。
 そこで、この説教の「なぜという問のない生き方」についてであるが。もし、私たちが神の業を行うにおいても、自らの意志でそれを行うのなら、他のこと、すなわち私たちの私生活においてはなおさらである。私たちは、誰から言われたのでもなく、神から命じられたからでもなく、「なぜという問いなしに」それを行うのである。私たちは、神の御心にかなうことを自らの意志で行うのであり、それ以外にはない。私たちが神に従うということは、神の御心にかなうことを自分の意志で行うということであり、そうでなければ、神に反逆する以外になく、これら二つの中間はないのである。あると思うならそれは妄想であり、悪魔の欺きに騙されているのである。悪魔の意図は、私たちの献身を鈍らせることにあるからである。
 私たちが神に喜んで従うこの聖なる意志は、どこから来たるのか。それがここでエックハルトが語っていることである。すなわち、「神のためにあなた自身から完全に離れよ。そうすれば神はあなたのために自分自身から完全に離れるのである。この両者が共に離れるとき、そこにあるのはひとつの単純な一である。この一なるものにおいて、父はその子を最内奥の泉に生む。そこに聖霊が咲き出で、そこにひとつの意志が神の内に湧き出でる。この意志は魂に属するものである」と。
 繰り返し言うが、神はあなたの魂を通して働かれる。それは、正に神の業であり、神の栄光であり、神の臨在であるが、あなたの魂は、あなたの魂のままなのである。そこで、あなたが自分自身から離れるなら、神はあなたの内におられるゆえに、神もまた自分自身から離れる。それゆえ、そこに聖霊によって湧き出でた聖なる意志は、あなた自身の意志なのである。
 エックハルトは祈る、「どうかわたしたちが、このような仕方で、真に自分自身の内にとどまり、あらゆる真理を直接に、しかも少しの区別もなく、真の浄福の内で所有することができるよう、神がわたしたちを助けてくださるように。アーメン

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