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2011/06/09

神と神性とについて

 エックハルトは、彼の諸々の説教の中で、神に関する深遠な解き明かしをしているが、その中の特徴的なものに、「神」と「神性」という二つの概念がある。彼は語る、「神と神性とは、天と地ほどに遠く互いに隔たっている」と。そして、それらがどのように異なるかについては、「神は働き、神性は働くことがない。神性は働くべきいかなるものも持たず、神性の内にはいかなるわざもない。神性が何らかのわざに目を向けたことは一度もない。神と神性とは、働くことと、働かないこととで区別される」と言うのである。
 私たちが自分というものを良く観察し、それに基づいて知性的に考察するならば、次第に自分の精神の構成要素が認識されてくる。それらは大ざっぱに言えば、まず五感があり、次にそれらの働きから像を受け取り理解する論理的思考能力がある。私たちが神を認識するのは、この能力によるのであり、通常人が意識するのはここまでである。しかしエックハルトによれば、さらに私たちの知性には、「像も形もなしに認識する能力」があり、それは実は測り知れない可能性に満ちた世界である。この高次の知性は、低次の論理的な知性が捉えた「神」を、さらに高度に純粋な姿において捉えるのであり、それが「神性」というものである。そこで、ここにおいて「神性」に対して「神」と言われている対象は、個人の心の内にあり、それぞれに幾分か異なって存在している可能性のあるものであり、そのようにして「神」は、万人の心の内にご臨在される。それは、「神は人が考え出したもの」という意味ではなく、実在する神の栄光が人の心に射し込み、そこにご自身を現されるということにおいてである。ところが人の知性は、その神の像に様々な着色を施すこともまた事実である。しかし、高次の知性にあっては、「個」という概念はすでに突破されている。というのも、この領域には、形態や法則というものはなく、時間も戦略もないからである。そこで、この高次の知性の領域においては、そこが個人の領域でありながらも、すべてが共通なのであり、人の理性的精神は、いわばこの高次の知性の領域から流出し来たったということもできるであろう。逆に言えば、人の精神の内にそのような概念を超えた高次の領域が存在しているのである。この場においては、「1匹の蚊も人も同じ原像を持つ」とエックハルトは言う。そこでは、すべてのものは一である。この場所は、人間の精神の中にあるという意味では、個々人の固有の場所であり、それらは互いに共通部分を持たない。しかし、また同時に、それらは意味において、働きにおいて、目的において、共通しておりそれゆえそれらは、全くの一なるものと言うこともできるような場所なのである。というのも、そこには、個々人の固有性を区別するような概念自体が存在しないからである。そこで、それらは互いに別々の空間的場所にありながらも、この地上においてさえも、本質において、働きにおいて、一つなのである。そして、人はこの高次の知性の領域を意識するまでに自己を理解することが可能なのである。もちろん、人の意識は、感覚と理性を同時に意識できないように、論理的な精神の領域と高次の知性の領域を同時に意識することはできないのであるが。
 そしてエックハルトは、他の説教で驚くべきことを言っている。それは、「神は、ただ自己自身だけを認識することによって生きるひとつの知性である」ということである。「その知性は何ものにもいまだかつて触れられたことのないところでひたすらそれ自身の内にとどまりつづけている」と彼は言う。そこで驚くべきこととは、私たちは私たちの高次の知性の領域において、神とひとつだということである。なぜなら、神は私たちをご自身の似姿に造られ、私たちの精神の内に住まいされるからである。
 それゆえ、私たちが神に対する永遠の従順を獲得したいと願うならば、この高次の知性の領域を意識するまでに、この世界の諸々のものから超然として、その領域において、神と共に働くまでに神とひとつになることが道なのである。つまり、私たちはこの世界のすべてのものを、この高次の知性の領域にある形態において、つまりそれらが御子の内にあるままに認識すること、すなわちエックハルトの言葉を借りれば、「それらをその精神的有からわたしたちの知性の内へと運び入れる」ことが必要なのであり、そのようにして私たち自身がこの根底の内へと帰り来ることが必要なのである。
 エックハルトは語る、「わたしが、神性のこの根底の内へと、この基底の内へと、この源流と源泉の内へと帰り来るとき、わたしがどこから来たのか、わたしがどこに行っていたのかと、わたしに聞く者はいない。わたしがいなかったと思う者は、そこにはだれもいないからである」と。

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