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2009/09/14

神に知られる業

知性と意志とについて

 「我らは神の中に生き、動き、存在する」(使徒17:28)とパウロは言った。神は、私たちの心の内におられる。しかし同時に、私たちも神の中に生き活動しているのである。つまり、神を訪ね求めるとき私たちは、自分自身の内に臨在される神に聞くのであるが、それはまた同時に、私たちがその中で生き活動している神を探求することなのである。エックハルトは、このことを「神の内で神を認識する」と言う。この包含関係は超越性ということであり、それはまた体と魂の関係でもある。すなわち、肉体が魂を入れるのではなく、肉体が魂の内にあるのである。さらにそれは、エックハルトによれば、歴史における時間の流れと「今」という一瞬の間の包含関係でもある。つまり、すべての時間は、今というこの一瞬と境を接しているのである。
 私たちは神を知性と意志の両方で求める。しかしエックハルトによれば、意志よりも知性の方が神を認識することにおいて本質的だという。というのは、私たちが意志において求めるものには、自分の価値判断が含まれるからである。もちろん練達により、意志から不純なものが次第に取り除かれて、ただ神の栄光だけを求めるようにされるということはある。しかしその場合でも、意志が求めるものは、エックハルトによれば「善」という覆いが掛かった真理なのである。しかし知性には、そのような覆いは掛かっていない。もっとも知性は通常、すべてのものを「像」を介して認識するのであり、この「像」自体が一つの覆いと言えないこともないのだが、高次の知性にとっては、「像」は必ずしも必要ではないのである。
 しかしながら、私たちが神を探求する上で、もう一つ考慮しなければならないことがある、それは私たちは神から完全に隔てられているということである。それは、罪による断絶以前の状況なのであり、私たちの被造性に基づくものである。つまり、私たちは神の一部なのではなく、神から独立した存在なのである。私たちの堕罪と救済に関わるすべてのことがこの私たちの独立性を示している。そこで、私たちが神を知るために、神の何かを手に取って観察するというようなことはできない。ちょうど、道ですれ違う人と自分の関係のように、私と神とは、赤の他人の関係なのである。そこで神のことを知る方法は、観察ではなく、誤解を恐れずに言えば、それは「実験的な努力」によるのである。ちょうど、人が愛する人の心の思いを察するときのように、それは実験的であり、そこには失敗の危険性が常に伴うのである。しかしまさにそれゆえに、その努力は試みる価値のあるものである。自分が愛する人とそっくりに神から創造されたゆえに、その努力が実を結ぶことができるのである。
 しかし、構造的には上記のようであっても、実際にはそこに神の備えられた道があるのであり、私たちが神を知るための確固たる方法論が存在するのである。それはまず、神が人をご自身の似姿に創造されたということゆえに、私たちは神のことを思い、慕い、憧れ、礼拝することができるのである。これは、創造論的な方法である。そしてもう一つは、福音的な方法であり、イエス・キリストにより与えられるものである。それは何かと言えば、聖霊の助けにより神に近づくことに他ならない。神に近づくために、これ以外の方法はない。聖霊の助けにより、私たちは神に近づき、神との距離を常に最短に保つことができる。それ以外の方法はない。しかし私たちの知性は、そのことを知覚できないかもしれない。それは、高次の知性における精神の覚醒のレベルにもよるのだが、それでも基本的には、私たちは自分と神との距離を知覚できない。もともとそこには、距離というような概念さえないのだから。しかしそこに確かに、ある種の認識が生じ得る。ちょうど愛する人の気配のような喜ばしい臨在のようなもの、それは認識としか言えないのだが、とにかくそこに与えられるのである。
 聖霊の助けにより、神に近づいた私たちは、次にいったい何をするのだろうか。エックハルトによれば、私たちはそこで魂の浄福を造り出すのである。彼は言う、「自分自身の内で漂うこの認識の内で魂の浄福を造り出すためには、魂はそこでひとつの譬え言葉でなければならず、神とともに一なるわざを働かなければならないのである」と。「造り出す」?、しかも私たちが自分で?それは、作り物(イミテーション)ではないのか。確かにそうである。しかし、それ以外の方法はないのである。私たちが自分自身の中に新たな浄福を持とうとするならば。しかし、何のために。それは、神の栄光のためである。この世界における短い一生において、私たちにできる最善のことは、エックハルトが言うように、私たちが神のかたわらで、ひとつの「譬え言葉」となることなのである。

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