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2009/09/08

神に知られる回帰

なぜという問のない生き方について

 自分の人生に対して「なぜ」と問うことほどつらいことはない。しかし、ほとんどすべての人が、この不幸な問いを発した経験を持つか、または今もなお発し続けていると思われるのだ。それは、人が神の祝福から離れ、自らの罪の中に埋没しているゆえである。「神の祝福から離れる」とは、どういうことであろうか。それは、人が神から流出したとき、すなわち創造された後に、神への全的な依存を自らの意志でやめたということである。そして人間は、神から与えられるものでは満足せず、「賢くなるに好ましいもの」を、しかも自分のために求め始めたのであった。神の栄光をあらわすために創造された人間が、それを拒否し、自分のために生きるようになった。そこに「なぜ」という問いが生まれたのである。しかし、星瞬く夜空を見上げれば、誰しも自分の小ささを実感するであろう。そして、この大宇宙を造られた神に全的に依存している自分を実感するに違いない。かつて神は、アブラハムを天幕の外に呼び出し、空の星を数えさせて、「あなたの子孫は、この星のように多くなる」と言われた。アブラハムは、神を信じた。そして神は、それを彼の義と認められた。アブラハムは、神に全的に依存したのであり、彼が信仰の父と言われる所以である。
 「神に全的に依存する」とは、自分の自己実現を完全にあきらめることである。それは、神の最初の祝福への回帰なのであり、エックハルトによれば、「自分の被造物としての有のあり方にしたがって、自分自身より離れ、あなたの内に神を神としてあらしめること」である。しかし、一度神から離れ、善悪を知ってしまったものが、そのような自己の意志を放棄して元の無垢な状態に戻るということが果たして可能だろうか。たとえ一時的にそれができたとしても、彼の心は絶えず反逆への誘惑にさらされたままなのではないのか。「師たちはそろって、その意思が時間と共に流れ去ってしまった以上、決して再びもどってくることはないと言っている」とエックハルトは言う。しかし彼自身は、「この意志がみずから自身とあらゆる被造性とから、ほんの一瞬だけでも、はじめの根源へと帰還するならば、その意思は、その本来の自由なあり方にたち帰り、自由となり、そしてその瞬間、一切の失われた時間が再びとりもどされる」と説くのである。
 彼が、この神の最初の祝福への回帰を可能と考える理由は、この自己放棄が人間の側だけで行われるのではないということに基づいている。「神の愛は、神がその独り子を世に遣わし、わたしたちが子とともに、子において、子によって生きるようにしたことのうちに示され、顕われた」と彼は言う。キリストは、私たちがまだ罪人であったときに、自己のあり方を放棄してこの世に下り、人となられたのであった。「ここに愛がある」。それゆえに、あなたがもしあなたの自己の被造物としての在り方を放棄して、神のために自分自身から離れるなら、エックハルトが言うように、「そうすれば神はあなたのために自分自身から完全に離れるのである。この両者が共に離れるとき、そこにあるのはひとつの単純な一である。この一なるものにおいて、父はその子を最内奥の泉に生む。そこに聖霊が咲き出で、そこにひとつの意志が神の内に湧き出でる。この意志は魂に属するものである」。
 つまり、あなたが神に全的に依存するとき、神もあなたに全的に依存されるのである。いや、神はすでにあなたに多くを依存しておられるのである。それが神があなたに自由意思を与えられたということなのである。主イエスは、「全世界に出て行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えよ」と言われた。そして、福音を私たちに全面的にゆだねられたのである。神は、あなたの職場の友の救いをあなたに全的にゆだねておられるのである。そして、さらにあなたが自分の楽しみや計画、つまり人生のすべてを神にゆだねるとき、神はそれと同様にあなたにすべてを委ねられるのだとエックハルトは言う。そこで、あなたが自己を放棄して神の元へ帰るとき、あなたは新しい自己を獲得するのである。あなたが戻る先は、あなたを拘束しようとする不可解な力の元ではない。返ってあなたに自分自身を与える無二の愛の元なのである。そのことを私たちは、自分の理性で正しく認識することは難しい。私たちの前には、自分の罪による死と苦悩の恐怖が立ちはだかっているからである。しかし、主イエスを信じる者は、それらに打ち勝つ力を得る。神が聖霊により、助けを与えられるのであり、それにより私たちは、御子のために自分を捨てることを可能とされ、神の最初の祝福へと回帰するのである。

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