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2008/11/29

ペテロと愛弟子、結び

ヨハネの福音書(第21章15節~25節)
 ブルトマンが書いたヨハネ福音書の注解、その学びもついにこれをもって完結することになる。この福音書を書いたヨハネとはどういう人で、ヨハネ福音書とは、どういう書物なのか。これがブルトマンの最大の間心事だったのである。それに対してキリスト信徒の中には、「そんなことは、どうでも良いことで、信仰とは関係ない」と言う人がいる。しかし、そんな独りよがりの信仰で、伝道ができるものだろうか。
 たとえばクリスチャンは、ときに伝道的なアプローチにおいて、「アダムの堕罪により、罪が全人類に入り込んだ」と言うパウロの言葉により罪の起源とその結果としての現代の悲惨を説明しようとする。しかし、アダムが犯した罪がどのようにしてその隣人に伝播し、さらに全世界に伝播するのかというその仕組みについては、何の関心も示さず、聖書を鵜呑みにしているだけであり、そのような態度を「聖書をありのままに信じること」だと言う。しかし、本当にそうであろうか。「聖書をありのままに信じる」とは、聖書に記述されていることが本当に起こったことだと信じることであり、鵜呑みにすることとは違うと思うのだ。もし、「聖書をそのまま信じる」というのなら、罪の説明において、何も創世記を紐解かないまでも、新約聖書に「すべて信仰によらざることは罪なり」と書いてあるので、それを信じて宣教の言葉とすれば良いのである。しかし、なぜかそれでは、ちょっと不足だと考えて、その理由付けというか根拠として、創世記の記述を持ち出すのだと思う。しかし、上述のように、それは、一般人に解かるような十分な説明を欠いていて説得力がないのである。クリスチャンが上述のような倒錯した理論武装をしているのは、まことに驚くべきことであり、彼ら(すなわち私たち)がまさに「羊」と呼ばれるゆえんだと思う。羊は、まったくばかであり、自分の隣で仲間がほふられていてもその場を逃げないそうである。しかし、私たちが上述のような倒錯した理論展開をしているまさにそのときに、それを聞いている人の耳に悪魔が囁いているのである、「こんなばかな話を信じられるはずないでしょ」と。
 私がブルトマンに好感を持つのは、少なくとも彼は、上述のことに気づいており、そのようなアプローチを極度に憎んでいるように思えるからである。
 そんな彼が、このヨハネ福音書の最終章を、無名の若僧の使徒ヨハネが、彼の著書たるこの福音書を権威付けるために書き加えたのだと主張する。イエスがベテロに3度、ご自身への愛を問い正した後で、殉教の預言を与え、服従を命じられたこと。そして、それと対象的な、ペテロを嫉妬させるようなヨハネの将来への言及。それらが書かれたことの目的は、ヨハネ自身をペテロと同格に持ち上げることであり、さらにそのことが彼の著書たるヨハネ福音書の権威付けのためであったという。さらに、イエスが言われた、「ご自身が戻ってくるまでヨハネが生き残っていることを望む」ということ、そしてその結果、弟子たちの間に、「ヨハネは死なない」という噂が広まったこと。そしてヨハネ自身が、それを単なるイエスの仮定話だと念を押していること。それらは実は、後にこの不死身と言われたヨハネが死んだことによる、聖書の事後訂正なのだという主張。これらを聞くとき、それまで羊のように脳天気ににやけていたクリスチャンが、こんどは突然に血相を変え、目を血走らせて、聖書の後ろに隠れながら、「神への冒涜だ!」とブルトマンを糾弾する。そのような状況を傍から見て、ノンクリスチャンはどのように思っていたことだろう。
 そのようなことを背景に私は、この第21章には、ブルトマンという人の人間像というか面影が色濃く焼きついているように思えるのである。この注解書を書き終えようとするブルトマンの思い入れを読み取る思いがするのである。これは推測だが、ブルトマンは、この第21章におけるペテロの姿に自分を重ねて見ていたのではなかろうか。失敗が多く、イエスを3度否認し、一度は信仰を捨てたペテロ。若いヨハネに対してイエスが語った、祝福された将来像をうらやむペテロにである。しかし、主イエスは、ペテロに「私の羊を飼いなさい」と言われ、教会の統率を委任された。イエスを信じる信仰の生涯は、お行儀の良い優等生のクリスチャン生活ではない。返って、手探りの耐えざる迷いと探求の道である。今日、そのような信仰生活の中で、自分とは違う祝福された兄弟姉妹を見て、「主よ、あの人はどうなのですか」と問いかけたくなることがある。しかし、主イエスはその人に、すなわち、ブルトマンに、あのときのイエスと同じ、愛に溢れた眼差しを向けて言われるのである。すなわち、「あなたは私に従いなさい」と。

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